進化し続ける鮨(鮨 登喜和)

今回の新潟・山形飲んだくれツアーのメインイベントのひとつ、新潟県新発田市にある「鮨 登喜和」にランチに行ってきました。静岡の友人が行きたいと切望したお鮨屋さんです。友人はコロナ禍前に一度、自分は昨年2月以来の訪問になります。

 

はじまり

予約した時間に席に着きます。目の前で大将が最初の仕込みの仕上げをしています。ほれぼれする所作。贅沢な待ち時間です。

 

自家製ガリ

このガリもちょうど良い漬け具合で美味しいです。トータルで3回くらいお代わりしてしまいました。

 

蒸し物(蕪蒸し+薯蕷蒸し)

一品目は「真鯛の蒸し物」。蕪蒸しと薯蕷蒸しの合わせ技らしいです。浮かんでいる「真鯛をすりつぶして、下に沈んでいるえごねりとよく混ぜて食べてください」とのこと。素朴な味わいの逸品でした。

 

墨烏賊

秋から冬が旬の烏賊です。ただ、大将曰く「新潟近辺の墨烏賊は春が良い」んだとか。温暖化の影響で新潟近郊の海は2月ですでに春の気配だそうです。

細かい包丁細工が施してありすごく食べやすかったです。余裕で噛み切れます。お鮨の上にかかっている粉は墨烏賊を干して作った塩です。「普通の塩を使ってしまうと舌に塩が直接当たってしょっぱさが勝ってしまうため、敢えて同じ烏賊で塩を作っている」んだとか。

 

佐渡のクエ

クエも元々は南方の魚だそうです。「新潟近海で獲れるのは日本海の温暖化が進んでる証拠」だとか。

大将が握る前に女将さんが軽く炙っていました。味付けの柑橘は直接は使わず、酢飯の酢の代わりに柑橘を使用して酸っぱさを緩和しているそうです。確かにサッパリして美味!

 

メダイ

鯛ではなく深海魚です。昆布締めにしてあります。なんて言うか、複雑な美味しさ。

 

佐渡両津の南蛮海老

シャリの中には海老の頭の味噌のペーストが入っています。上にかかっているのは海老の殻を干して作った塩。一口サイズで、頬張ると濃厚な旨味が口内に広がります!

 

メジマグロの背中の中トロ漬け

背黒鰯で作った魚醤で漬けてあるそうです。内側に血合いが重ねてあり、背中と血合いの二枚重ねになっています。大将曰く「魚は背中側が一番美味しいと思う」とのこと。

血合いを合わせることでトロの脂感を中和して味を整えているそうです。実際、かなり味(旨味)が強いお鮨でした。

 

メジマグロの腹身のトロ漬け

こちらは自家製のブレンド醤油で漬けてあるそうです。シャリは赤酢を使用。弾力があるけど口の中ですぐ蕩けていきます!

握る前に少し脂を落としているので、サッパリ食べられました。

 

とと豆小丼

「とと豆」は新潟・村上地方の郷土料理だそうです。村上は塩引き鮭が有名なんですが、家庭でお正月に塩引き鮭を食べた際、イクラを固くなるまで煮込んでお雑煮の上に乗せて食べるそうです。その煮込んだイクラのことを「とと豆」と呼ぶそうです。

今回は半熟くらいまで煮込んであり、イクラの濃厚な美味しさが感じられました。イクラの下にある酢飯と混ぜて食べると、えもいわれぬ美味しさ!

 

佐渡の雌蟹

ズワイガニの雌の内子、外子、蟹味噌を全部別々にして茹で、蟹身と身をペースト状にしたものとを混ぜて作っているそうです。めちゃくちゃ手が込んでます。

上に乗っているのは卵黄と蟹味噌で作ったソースです。中に新発田の菊芋を刻んだものも入っていて、蟹の濃厚な美味しさとシャリシャリした菊芋の食感が不思議な美味しさを醸し出していました。

 

寒鰤の背中とお腹(ブリフィーユ)

2枚重ね第二弾。血合いが脂感を消してくれて、ちょうど良い風味になっていて美味しいです。大将は「ブリフィーユ」という呼び名を流行らせたいようですが…。

 

佐渡両津のバイ貝

コリコリ感最高!変に水っぽかったり柔らかくないなと思っていたら、「いったんタタキにするんだけど叩くと柔々になってしまうので、その後氷で締めて食感を上げている」そうです。さすが!

ちなみに他の方は上に梅のソースが乗っていましたが、自分の分はちゃんと梅を抜いてくれました(始まる前に苦手食材を聞いてくれています)。1対多のお客さんにこれだけ握って喋っての後半戦で、きちんと覚えていてくれるのは嬉しいですね。

 

佐渡のマグロのネギトロ

かまとろあたりを使用しているそうです。葱油で揉んで旨みを引き出しているとか。細巻きですがネギトロは溢れんばかりに入っていて大満足!(食べててちょっとはみ出してきました)。

 

穴子(煮詰め)

ラストの一貫。塩にするか煮詰めにするか聞いていただけるのですが、今回は煮詰めにしました。柔らかすぎて蕩けてしまうので、お皿を口の近くまで持っていって食べるよう、女将さんのアドバイスがありました。

なお、煮詰めは創業70年継ぎ足しの秘伝の味、塩は村上の瀬波の塩だそうです。

 

和三盆を使った玉子焼き

〆の玉子焼き。ふわっふわの玉子焼きの上面を和三盆でコーティングしてあります。上質な甘さのカステラみたい。

 

お吸い物

最後に口をサッパリして終了。最初から最後ま空間も味も堪能しました。

 

おわりに

こちらのお店に最初に訪れたのは2018年なんですが、当時はお昼のランチが5500円(10貫)と8800円(13貫)の2種類から選べました。この味を5,500円で堪能できるなんてコスパ良いどころか超破格!て思い、その後も何度か通わせてもらっています。

2024年現在ではランチに関してはかなり値上げされ、ディナーと同じ19,800円のコース一本になっているようです。ただ、木曜と金曜の昼のみ8,800円の握り中心のランチが提供される日があるので、今回はその8,800円のランチを狙って予約しました。

8,800円のコースでもお値段以上の満足は得られましたし、一緒に行った友人は「次はぜひ19,800円のコースを食べてみたい」と言っておりました。狙い通り。フフフフフフフ。

自分としては、久しぶりにお会いした親方の握り方が変わったな、て感じたのと、つけ台のお皿に置かれたお鮨のうちのいくつかが、一瞬の間をおいて少し沈み込むことに気がつきました。ほんの少しだけ、ふんわり沈み込むんですよね。シャリの含む空気の何ちゃらとかいう理論もあるようですが、自分がこれまで食べてきたお鮨でこういう「沈む鮨」は例外なく美味しかったです。もとから美味しかったお鮨がさらに進化しているのか!と驚嘆しました。親方の所作もより洗練されている感じを受けます。

一食に20,000円以上かけるのは勇気がいりますが、こちらのお店なら必ずお値段以上の満足をもたらしてくれると分かっているので、またいずれハレの日にでもコースを食べに訪れたいと思います。