7時間試聴してイヤホンを買った話

2019年の2月にAirPodsを紛失してしまいました。出かける直前まで手に持って移動してたはずなんですが、出かける時にはなくなっているという…。自宅内バミューダトライアングルが発動した模様。

以前愛用していた「SE535LTD」は壊れたままだし、今後公共交通機関での移動が増えることを見越して(期待して)新しいワイヤレスイヤホンを購入することにしました。ちょうど仕事がらみで東京に行くことになったので、年度末だし全然消化しきれてない有給休暇をくっつければ一石二鳥かな、と。

 

初めてのeイヤホン(秋葉原店)

出張初日は夜半までかかって仕事を終わらせ、ホテルにチェックイン。翌日の午後に秋葉原にあるeイヤホンに行きました。ちょうど東京行きの新幹線の中で暇つぶしに読んでいたネット記事に「Sound Air TW-7000」というワイヤレスイヤホンのことが載っていて、ちょっと調べたところ何だか良い感じ。お値段もそこそこだし、何よりカナルワークス監修だけあってイヤホンの形状がカッコイイ。音は試聴してみないと分からないので、試聴機があるか電話で確認してからお店に行きました。

 eイヤホンには初めて行ったのですが、ビルの上の階にあるんですね。有名店なので路面店なのかと勝手に思ってました…。路上看板が出てなければ多分迷っていたと思います。

 

Sound Air TW-7000を試聴してみました

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エレベーターを降りてまっすぐイヤホンコーナーに行くと、お目当ての「Sound Air TW-7000」はすぐ見つかりました。お店のイチオシ感が出てる場所にあって、「今なら在庫あります」なんてPOPも付いてます。幸い待ちはなかったので、備え付けのウェットティッシュでイヤホンを拭いてすぐ試聴に入りました。あっちこっちにウェットティッシュが備え付けられているのは地味にありがたいです。

 

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iPhoneと接続して聞き始めたんですが、軽く聴くには悪くない音ですね。自分が好きな「高音キラキラ系」のイヤホンです。中高音もそれなり。ただ、低音に関してはこういった高音キラキラ系イヤホンにありがちな抜けの悪い音でした。

「悪くはない。悪くはないんだけど、これだったらAirPodsを買い直した方が自分好みの音なんじゃないか?」という疑念が頭から離れません。でもまた同じものを買うのも面白くないし…。んー。

迷っているうちに後ろに試聴したそうな人が来たので、いったん切り上げて離れました。

 

MW-07を発見

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他にめぼしいワイヤレスイヤホンはないかと店内をフラフラしていると、以前からちょっと気になっていたイヤホンを発見しました。Master&Dynamic社の「MW-07」です。お値段 39,800円(税込)。「Sound Air TW-7000」の約3倍、AirPodsの約2倍です。でも「SE535LTD」よりは20,000円安い…。

昨年11月に発売された機種なのですが、デザインもさることながら音質を絶賛するレビュー(個人サイト・企業サイトともに)がとても多かった印象があります。気にはなっていたのですが、当時は「ワイヤレスイヤホンに4万円も出すんなら、SE535LTDを買い直した方が良いんじゃない?」と思っていました。SE535LTDを使っていた時に持っていたAAC対応のBluetoothレシーバーもまだありますし…。

さらに、SHUREからも抜群に音が良いという評価(有線とほぼ音が変わらないらしい)の純正Bluetoothイヤホンケーブルも出ているので、いずれSE535LTDに純正Bluetoothイヤホンケーブルを接続して音楽を楽しもうという目論見もありました。

しかし問題はお値段。SHUREの「SE535LTD」と「BT2(Bluetoothイヤホンケーブル)」をまとめて購入すると約8万円になってしまうんですね。あまりにも高すぎる…。そもそも今AirPodsで事足りていて特に困ってもないのに手を出すお値段じゃないな、と思っていたのが本音です。

(2019.09.13.にSE535LTDとBT2のセットが64,580円で売り出されました。しかもBT2単品でも5,000円ほど値下がりしてます。マジか…もっと早くやってくれれば…せめてあと2ヶ月早く…)。

 

試聴コーナーへ

「Sound Air TW-7000」が不完全燃焼気味だったこともあり、「MWー07ならお値段なりの音を聴かせてくれるのかい?」と試聴しようとしたんですが、実機が置いてあるべき場所には「メンテナンス中」との貼り紙が…。一瞬諦めかけたんですが、「明日もまだ時間がある!来ようと思えば来れる!」ということに気付き、店員さんをつかまえて「いつまでメンテナンスってしてるんですか?明日とか終わってませんか?」と聞いてみました。すると「あー、ちょっと分かんないですね。すいません。でも、確か中古機があったんで、そっちでよければ試聴できますよ」とのありがたいお言葉が!

 

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先客がいたので空くのを待って、ついに試聴コーナーで対面しました。試聴コーナーはお店の奥にあって座って聴けるのがとても良かったです。中古機とか新品でもガラスケース内に保管されているような超高級機を試聴する場合はこっちのコーナーになるのかな?簡単な貸し出し手続き(要身分証)はありますが、じっくり聴くのにはとても良いです。

ちなみに「Sound Air TW-7000」とか「MW-07」は狭めのハイカウンターに他機種と一緒に整然と並べて置いてあって、立って試聴するスタイルでした。こっちはこっちでいろいろな機種を次々と聴いて回るのには非常に都合が良いです。似たような傾向(お値段的にも)の機種が近くにまとめられているのもポイント高いです。気になっている機種を一気に聴いて回れますし、POPも参考になります。大型量販店だとあんまりこういう工夫がされてない気がします。

 

MW-07を試聴してみました

iPhoneを接続して「Sound Air TW-7000」で試聴したのと同じ曲を聴きます。

うん、もうね、圧倒的。何この深さ。音場の広さが全然違います。「Sound Air TW-7000」が耳の周りで鳴ってるようなペラペラした音だとしたら、「MW-07」は頭の中心に音楽ホールが再現されている感じ。音が深くなったにも関わらず、高音のキラキラ感は細かく聴こえてて、ボーカルの中高音もしっかり届いてきます。それでいて低音も犠牲になってない!ハイハットの細かい解像感からベースがうねり倒す感じまでしっかり再現しています。バスドラの音もちゃんと抜けてるし、何より音の密度が違いすぎて「Sound Air TW-7000」とはまるで比較になりませんでした。

念のため「MW-07」を試聴した後で「Sound Air TW-7000」をもう一回聴いてみたんですが、あまりの差にちょっと笑っちゃいました。いやこれは、値段のお手頃感とイヤホンの形に惑わされて買わなくて良かった…。やはり高いものには高いだけの理由があるんですね。「MW-07」を聴いてしまうと、もうちょっと戻れない感じ。この時点で「やっぱり多少高くても、自分にとって『安物買いの銭失い』にならないのが大事」と思い直しました。

 

方向性が定まったので、他の有名ワイヤレスイヤホンもいくつか試聴してみました(紹介記事が「Phileweb.com」だけなのは、企業サイトの方が簡単にリンク切れしないだろうというだけの理由です。企業サイトには提灯記事も多いので、やはり実際自分の耳で聞いてみない限りはホントのところは分かりません)。

何度も聴き直してみたんですが、「MW-07」を超える衝撃には出会えませんでした(途中でもう一回「MW-07」を試聴し直して、他機種を全部聴き終えた後にも「MW-07」を聴いて〆てます;計3回試聴)。いやこれはもう、競合他機種より「MW-07」の方が圧倒的に良い。音質には絶対的に個人の好みがありますが、自分的には同じ価格帯だったら断然「MW-07」を買うという結論に至りました。

この時点で最初の試聴から既に4時間以上経過しており、夜に約束している友人との飲みに向かわなければならない時間になっていたため、試聴を終了して退店しました。

あとひとつ、どうしても確認しておきたいことがあったので、まだ購入はしませんでした。

 

SE535LTDの魔力

「MW-07」を購入する前にどうしても確認したかったこと。それはSHUREの「SE535LTD」に「BT2(Bluetoothイヤホンケーブル)」をセットして聴いてみた音質はどうなのか、ということです。

もともと自分が高音質イヤホンにハマったのは、仙台駅近くのヨドバシカメラで「SE535LTD」を試聴したことがきっかけです。仙台を旅行中に当時使っていたSONYのイヤホンのイヤーピースを片方無くしてしまいヨドバシカメラに買いに行ったのですが、お目当てのイヤーピースを購入した後、友人との待ち合わせにまだだいぶ時間があったので、通りがかったイヤホンコーナーで「SE535LTD」を試聴してみたんですね。確か何かのセールをやっていてPOPも出て目立っていて、価格も3万円台後半まで下がっていました(当時は定価で49,800円でした)。「ほーん。まぁ試聴は無料だし…。お高いイヤホンってのはどんな感じなんでしょうねぇ?」って実際聴いてみると、

 

雷に打たれたかのような衝撃を受けました。

ナニコレイツモノキョクガゼンゼンチガウ。

 

それまでは、たかだか外で聴くイヤホンに高いお金をかけることには否定的でした。静かなリスニングルームならともかく生活音から交通音まで様々な音が飛び交っている最悪な条件の中で音楽を聴くのに、何でそこまでお金をかけなければいけないのか。リスニングルーム(ていうか室内)で聴くならむしろスピーカーで聴くし、高額なイヤホンなんて無用の長物なのでは?と。

 

もうね、そういった今までの概念が全部ひっくり返りました。

 

音楽が好きで、よく聴いています。

  • 家から職場までの往復。
  • 毎月のように遠方に研修受講に行くので、その全ての移動中。
  • 公共交通機関で旅行に行く際の移動中。
  • 休日、家を出てから目的地に着くまでの移動中 etc.

とにかく「移動」と名の付く間は、たいてい音楽を聴いています。歩いていても公共交通機関を利用していても。だからこそ「こんなにたくさんの時間音楽を聴いているのに、この音質で聴けていなかった今までは、自分の人生にとって損失だったんじゃないのか !?」て思ったんですね。

結果、何度も試聴して、あまりの高額にちょっと怯みながらも(今までこんなにイヤホンにお金を掛けたことがない)、2時間後には「SE535LTD」を購入してました。

その後、友人との待ち合わせ時間ギリギリまで観光そっちのけでホテルで音楽を堪能してました。

2013年に購入してから壊れるまでの5年間、SE535LTDの音質に全く不満はありませんでした。それどころか上級機種のSE846(定価約12万円)も試聴したのですが、値段に見合った音質の向上は感じられませんでした。2017年に壊れて以降SE535LTDの実機は聞いていませんが、今でも自分の中で高音質イヤホンの基準となっているイヤホンですし、初めてSE535LTDを聴いたときの衝撃はずっと忘れずに残ってます。

 

最後の確認

そんな「SE535LTD」に果たして「MW-07」は匹敵しうるのか?MW-07の実力は昨日の試聴で十分に感じられたので、あとは「SE535LTD+BT2」と比べてどこまでなのか?そして「BT2でワイヤレス化したSE535LTDの音はどこまで有線接続に迫っているのか?」てのが残る課題でした。

そしてその為にはかつて「SE535LTD」を初めて試聴した時と同じ曲で「MW-07」を聴いてみなければと思ったので、ホテルで当時を思い出しながらプレイリストを作成しました。

 

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翌日、準備が整ったところで勇んで再度eイヤホンに行き「SE535LTD+BT2」を探したのですが…。

残念ながら試聴品には「SE535LTD+BT2」はありませんでした。ただ、「SE535LTD」の隣に「SE535+BT1」があったのでせめてBT1を付け替えて試聴できないかと店員さんに尋ねてみたのですが、「すいません、できません」とのこと。理由はイヤホンとBT1がガッツリ接着されていたので。これは外せないわ…(多分盗難防止用)。中古でその組み合わせが出来ないか聞いてみたのですが、「SE535LTD」の中古はあっても「BT2」の中古品は無いとのことでこれも無理。

仕方が無いので「SE535+BT1」と「MW-07」を交互に聞き比べて比較しました。「SE535+BT1」は通常のハイカウンタースペースにあり、「MW-07」は昨日と同じ試聴スペースで聴くため、何度も場所を往復しながら聴き比べました。手元に「SE535+BT1」を借りてこられれば良かったんですが、そっちはそっちでハイカウンターに盗難防止装置付けて固定されてたので…。

 

戦い終わって日は暮れて

結局2日目も14:00〜17:00過ぎまで3時間以上聴き倒しました。2日目はもう「SE535+BT1」と「MW-07」の一騎打ちです。持参したプレイリストから聴くポイントを絞って曲を変えながら何度も聴き比べました(高音のキラキラ感、中高音の押し出し、低音の抜け、音圧、全体のバランス取り、解像感、ヴォーカルの息づかい、ブレスの切り上げ、弦楽器の音、ブラスセクションの分離、コーラスの音の重なり方と分離、音の細かさと曲全体のまとまりのバランス、音色の階層化、音の切れ目と静音時のホワイトノイズ、etc.)両方のイヤホンの音質を気が済むまで確認しました。

 

結果、「MW-07」(新品)を購入することにしました。

 

「MW-07」購入の決め手になったのは、「SE535+BT1」より「MW-07」の方がサラウンド感が強く低音の処理が上手だったから。「SE535」は「SE535LTD」より音質がニュートラルに寄った造りでモニターライクに感じました。音質は良いのですがキラキラ感や中高音の押しが「SE535LTD」より少し弱い印象。そして何より低音が「MW-07」に比べて大人しい感じでした。「SE535LTD」を初めて購入した時と聴く曲の傾向が少し変わり、低音のビートを効かせた曲も聴くようになったため、余計にそう感じたのかも知れません。「MW-07」の方がビートが耳に刺さる感じが心地よく、また低音が消えていく際の深みも一層広く感じました。

 

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 eイヤホンが入っているビルから外に出ると、もう日が落ちて暗くなりかけていました。いやー、堪能しました!「MW-07」を購入できたことにも大満足だし、同じランクの話題のイヤホンもまとめて試聴し倒すことが出来たので、経験としてもすごく良かったです。ワイヤレスイヤホンはようやく黎明期が終わってこれからは高性能化がどんどん進んでいくだろうから、またエポックメイキングになりそうな機種が出てきたら、まずはこちらに試聴に来たいと思いました(黎明期に5機種以上を試聴せずネットで購入して、そこそこ失敗しているので。ERATOとかear-inとか)。

あと、どうしても心残りだったのが「SE535LTD+BT2」を試聴できなかったこと。BT2はSHUREが独自開発したヘッドフォンアンプを積んでいるので、BT1とは全く違った音になっているはずなんですよね…。「SE535LTD」と「SE535」も音の傾向は違うし。

 ただ、これに関してはもし今ここで「SE535LTD+BT2」を聴けたとして、音が「MW-07」より少し上回っていたとして、果たして8万円を注ぎ込めるか?4万円余計に払って、ワイヤレスの便利さからワイヤードの不便さに戻るだけの価値があるか?「MW-07」でこれだけの音質が実現出来ているし、多分「SE535LTD」の機械特性(バランスドアマーチュアドライバのみで構成)からして、低音の量感はダイナミックドライバ搭載の「MW-07」に利があるぞ?等々、試聴しながらぐるぐるぐるぐる考え、最終的に「MW-07」でいく、と腹を括りました。「SE535LTD+BT2」についてはまたいつかの課題として取っておきます。

 

エージング開始

お店を出る時に充電を開始し、帰りの新幹線の中で使用を開始しました。予想通り試聴した中古のものより音がバランス良く聞こえます。そして音圧は低い感じ。新品のイヤホンの特徴が出ています。科学的根拠はないですが、聴く音楽によってドライバの振動が変わるので、音もそれ仕様に変わっていくと自分は感じています。しばらくは幅広いジャンルの音楽を聴いて、エージングを進めていこうと思います。