磨き その先へ(獺祭Bar 23)

2014年当時、巷ではすでに大人気で品薄になっていた銘酒・獺祭のアンテナショップ『獺祭Bar 23』が京橋駅近くの東京スクエアガーデン地下一階にあると知り、飲みに行ってきました。蔵元が出すアンテナショップだけあって獺祭のフルラインナップが常時飲めるのも魅力的ですが、自分の目当ては獺祭の最高峰酒「磨き その先へ」。旭酒造が「これまでの最高峰のさらに先へ行く」と強い想いを込めて送り出したフラグシップです。このお酒が飲みたいがために、新幹線に乗って東京まで行ってきました。

これまでの獺祭の最上位は「磨き 二割三分」という精米歩合が23%のお酒だったのですが(店名の23もこれに由来)、さらにその上を行く「磨き その先へ」は精米歩合非公表。とはいえ当然二割三分以上には削っていると思われます。なお精米歩合だけではなく、原材料:非公表、日本酒度:非公表、酸度:非公表、使用酵母:非公表と、全ての項目で非公表となっています。蔵元の旭酒造には杜氏はいませんので、杜氏名も無しです。

そしてお値段は四合瓶(720ml)で30,000円(税抜)!お値段も最高峰クラスです。ちなみに獺祭Bar 23での一杯の値段もグラスで6,250円です(しかも正一合ではない)。日本酒一杯に正気の沙汰か⁉︎ と思わないでもないですが、「かんだ光壽」で飲んだ「磯自慢 中取り純米大吟醸35」も一杯6,000円クラスでした。こちらのお酒も定価だと25,000円〜30,000円くらいだったと思います(年によって違う)。

値段もさることながら、問題はお店に入れるかということ。『獺祭Bar 23』はカウンター・テーブル合わせて16席しかなく予約も受け付けていないため、なかなかハードルは高いです。しかもお店は日曜定休なので、土日休みのこちらとしてはチャンスは土曜の一日のみ。訪問当日は土曜の16:00過ぎという微妙な時間帯の訪問でしたが、タイミングが良かったのかそんなに待たずにカウンターに座ることが出来ました。

 

五種お試しセット

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オーダーは獺祭五種類を少量ずつ飲める「五種お試しセット」にしました。「磨き その先へ」や「磨き 二割三分」などの超レア酒がちゃんと入っていて3,100円という驚愕のハイコスパです。「磨き その先へ」を一杯頼むならこれを2セット頼んだ方が良いかも。

 

磨き その先へ と 磨き 二割三分 

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圧巻の味。「二割三分」でも十分美味しすぎるのだけど、「磨き その先へ」は確かに『さらにその先へ』行ってました。「二割三分」と同じような爽やかな甘さなんだけど、後味の抜け感というか余韻が全然違います。「二割三分」は最後まで爽やかな甘さが持続して最後はスッと引く感じなんだけど、「磨き その先へ」は少し膨らんでふわりと消えていくような感覚。ひょっとしたら精米歩合は「二割三分」と同じかもうちょっと落としてるんじゃないか?と思えるくらい味の膨らみを感じました。

いずれにしてもこの二種類を飲み比べられる幸せがそこにあるなら、新幹線代は決して高くないと思えました。来て良かった…。

 

磨き三割九分 と Otter Fest Sake

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三割九分も当時はなかなか手に入らなかったお酒です。獺祭50ならまだ運が良ければお店で見かけることもあったけど。味的には「二割三分」と「三割九分」はもう全然違う、隔世の感がありました。「三割九分」と「獺祭50」も同じ。こりゃ今後自分で購入するなら三割九分がベースラインかな、と飲みながら思いました。

「Otter Fest Sake」は Otter(獺)と Fest(祭)で「獺祭」をそのまま英語にしただけです。見たことない種類だなーと思っていたら、こちらの獺祭Bar 限定の発泡にごり酒とのことでした。せっかくなので、メニューにあった普通の発泡にごり酒とも比べてみました(次項)。

 

寒造早槽 と 発泡にごり酒

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「寒造早槽」は厳冬期に作られる冬の限定酒…。なんだけど、獺祭は完全に温度管理のされている蔵(ビル)で作られているため、一年中寒造りが可能だったりします(寒造早槽を造る階の温度を下げれば良い)。 たぶん獺祭Bar では一年を通してメニューに載っているんじゃないかな。味的には「獺祭50」とそう変わりませんでした。

追加でオーダーした普通の「発泡にごり酒」は酸の効いたキリッとした飲み口のお酒。対して「Otter Fest Sake」は甘めで、対比を楽しめました。自分的にはにごり酒じゃない「獺祭スパークリング」の方が美味しいと思えたので、あえて買いたい(飲みに来たい)とは思いませんでした。

 

メニュー表

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獺祭の値段もさることながら、とにかくフードの値段が飛び抜けていた印象があります。ちょっとしたものでも1,000円は下らないし、平均単価は3,000円近くあった気がします。後で知ったんですが『獺祭Bar 23』は獺祭・旭酒造のアンテナショップではあるものの、プロデュースは徳島の名店・青柳だったんですね(ミシュラン三つ星常連の「龍吟」店主の山本征治氏や、同じく三つ星店の「銀座 小十」の奥田透氏が若かりし頃に修行したお店)。それだったらもっとちゃんと食べておけばよかったと、今さらながら後悔しています。ていうか実はこの記事を書いている時点(2019年)でそれが最大の後悔だったりします…。

 

 

まとめ

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払った交通費に見合う以上の素晴らしい体験ができました。やはり「獺祭」、ポテンシャル高すぎです。記事上では辛口でしたが、そこらの酒と比べたら「獺祭50」でも十分美味しい部類に入りますからね。贅沢な飲み比べでした。

なおこちらの『獺祭Bar 23』は、2019年4月に閉店してしまったようです。また行きたいと思っていたのですが残念です。ただ、銀座五丁目にある獺祭バーでは有料テイスティングを行なっているようなので、また東京に行った際には立ち寄ってみたいと思います。